

森永製菓株式会社様
導入事例
グローバル経営を支える共通基盤へ
森永製菓グループ 全社DXプロジェクトとSAP刷新
1899年の創業以来、「おいしく、たのしく、すこやかに」を掲げ、菓子、食品、冷菓、健康食品など幅広い事業を展開してきた森永
製菓株式会社。同社は「菓子メーカー」から、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける「ウェルネスカンパ
ニー」への進化を掲げ、事業活動そのものの変革に取り組んでいる。
その変革を支える経営基盤として推進されたのが、SAP S/4HANAを中核とする全社DXプロジェクトである。国内基幹システ
ムの刷新に加え、海外拠点へのSAP展開、SCM計画領域の変革、データ活用基盤の整備までを含む大規模な取り組みとして進
められた。
2009年から森永製菓グループのSAP導入・保守を推進してきたJSOLは、同社の業務とITの双方を深く理解するパートナーと
して本プロジェクトに参画した。Fit to Standard(標準機能活用方針)を基本にしながら、食品業界固有の商習慣や現場要件
とのバランスを取り、標準化、データ活用、将来のAI活用へとつながる経営基盤づくりを支援した。
課題
- グローバル成長に伴い、業務・システム・データが拠点・部門ごとに個別最適化
- 既存SAPはグループ全体管理を前提とした設計ではなく、データ分析・利活用に非効率が発生
- SCM計画領域ではExcelが部署別・月別に分断され、計画・シミュレーション・振り返りに制約
ソリューション
- SAP S/4HANA移行を契機に、全社共通基盤としての基幹システムを再構築
- Fit to Standardを基本に、食品業界固有の商習慣や現場要件との両立を支援
- 国内基幹、海外展開、SCM、データ活用を横断し、業務・IT両面から伴走
導入効果
- 国内外のグループ全体を見据えた標準化・データ活用基盤を整備
- 海外製造拠点での原価管理・利益構造可視化に向けた基盤を構築
- データドリブン経営、原価分析高度化、AI活用へつながる次の成長基盤を確立
なぜ今、基盤づくりだったのか
同社では2021年にDX推進部が発足し、同時期に策定した長期経営計画「2030経営計画」で、グローバル成長を支える経営基盤の要として「情報」を重視した。
DX推進部長の折見
直彦氏は、ERPを中心とする基幹システムを「情報を司る中核」と位置づけ、今回のプロジェクトを「経営基盤改革の中核となる取り組み」と表現する。「各国・各拠点が円滑に事業運営できるよう仕組みを整備してきた結果、業務、システムやデータもサイロ化していました。グローバル全体のデータをタイムリーに取得し、高度で迅速な意思決定をしたい。しかし、実態としてはそれができない。これが大きな経営課題でした」(折見氏)
背景にあるのは、国内市場の成熟と海外事業の伸長だ。「国内市場だけで成長を支えることは難しくなっています。海外に資源配分を変えていくなら、数年後に困ってから基盤を作るのではなく、半歩先を見据えて整備しておくべきだと考えました」(折見氏)
2008年に本格上陸し、2013年に製造子会社を設立した米国事業は、いまや海外事業の柱に育っている。

森永製菓株式会社
DX推進部長
折見 直彦 氏
従来のSAPは会計システムから原価管理、販売管理へと段階的に拡大してきた一方、グループ全体の管理を前提とした設計ではなく、データ活用の非効率が課題となっていた。現行のSAP
ECC6.0の保守期限も迫る中、同社はSAP
S/4HANAへの移行を「全社共通基盤としての基幹システム」を構築する契機と位置づけた。
このような考え方を支えるのが、DX人材育成への投資だ。同社では、従業員が自律的にDX人材へ成長していく仕組みづくりを進めている。この取り組みは、株式会社ベネッセコーポレーション主催のBenesse
Reskilling Award
2025でイノベーティブストラテジー賞を受賞している。折見氏は、当初は「DX羅針盤」のもとで全方位的にデジタル化を進めてきたが、今はどこに集中投資すべきかを見極める段階に移ってきたと話す。
2030経営計画の達成に向けた基本的な考え方
- 「心の健康」「体の健康」の観点から、当社成長と市場創造が期待できる事業へ経営資源を集中
- 安定的に成長投資を創出するべく踏み込んだ構造改革の実行
- 事業戦略を強力に推進するための経営基盤づくり
- これらの実現に向けた従業員がいきいきと活躍できる仕組みづくり
出典:森永製菓株式会社 公式サイト
2009年からの関係を土台に広がった、4つの変革領域
両社の関係は長い。JSOLは2009年に森永製菓グループへSAP ソリューション(販売物流・マスタ)を導入し、以降も保守サポートを継続してきた。業務とITの双方を熟知し、SAP
S/4HANA移行の実績を持つパートナーとして、同社のDX戦略を踏まえたIT基盤再構築に貢献することが、今回JSOLに求められた役割だった。
プロジェクトは、国内基幹刷新、海外(米国)へのSAP展開、SCM計画領域の変革、データ活用基盤の再構築という4領域が連動して進み、2025年にかけて段階的に本番稼働を迎えた。なお、SAP基盤はAWS上で稼働しており、JSOLが持つSAPとクラウド双方の知見が、この4つの領域を横断する形でプロジェクトを支えている。
国内基幹刷新 — 標準化の一線をどこに引くか
国内基幹刷新を率いたDX推進部長付の櫻沢 和秋氏は、従来のSAP
ECC環境について、グループ各社へ個別に機能を追加してきた結果、業務プロセスやデータ管理のあり方が会社ごとにばらつき、一貫性を欠いていたと振り返る。今回は単なるシステム更新ではなく、グループ全体で業務の標準化を図り、将来のデータ活用を見据えたグループ共通基盤としての再構築が重要な役割だと語る。
業務標準化の基本方針はFit to
Standardだが、食品業界独自の商習慣や同社が培ってきた現場の強みが存在する。そのため、すべてを標準へ機械的に合わせる方針は採らなかった。既存アドオンも含めて「標準化すべき業務」と「変えない理由」を整理し、現場から経営層までを巻き込みながら合意形成を進めた。その結果、アドオン54%削減と現場定着を両立した。こうした標準化は、単にアドオンを増やさないための技術的な判断ではない。将来にわたってグループ全体でデータを活用できる基盤をつくるための経営判断でもあった。
櫻沢氏は、JSOL社の業界理解とファシリテーション力がなければ実現できなかったと話す。
プロジェクトで最も苦労した局面を、櫻沢氏はこう振り返る。「途中で別のパートナー会社が継続参加できなくなりました。そのとき、JSOL社がプロジェクトを引き継ぎ、ドキュメントが整っていない領域も含めて紐解き、およそ4か月で開発が進められる状態まで立て直してくれました。JSOL社でなければ難しかったと思います」
経営層・現場責任者が加わるステアリングコミッティを設けて合意形成しながら進めたことも特徴だ。
「同業他社のSAP刷新トラブルが経営に影響した事例もあり、失敗できないという危機感がありました」(櫻沢氏)
JSOLは関係者を俯瞰するコーディネーターやリスク管理の役割も果たし、ステアリングコミッティにおいて、リスクや論点を整理し、経営が適切に判断できる環境を整えることで、プロジェクト全体の合意形成を支援した。

森永製菓株式会社
DX推進部長付
櫻沢 和秋 氏
海外展開 —データドリブンなグローバル経営への第一歩となる、 初の海外SAP導入への挑戦
海外展開を担当したDX推進部 データドリブン推進グループの小島
亙一朗氏は、本プロジェクトを「単なるシステムの刷新ではなく、グローバルで共通のデータと業務基盤を持ち、将来の海外事業拡大を支える経営インフラを作るための変革プロジェクトだった」と振り返る。
海外拠点では、それぞれの地域や事業特性に応じて業務プロセスやデータ管理の仕組みが発展してきた。一方で、経営視点では拠点ごとに情報が分断され、迅速かつ横断的な意思決定を行う上で、課題が顕在化していた。
プロジェクト推進にあたって、経営層・海外事業本部・現地法人といった多様なステークホルダーとの合意形成を進めた。将来のグローバル展開へつなげる構想を見据えながら、未来につながる導入プロジェクトを推進。また、時差や文化の違いを超えたコミュニケーションも重要なテーマであり、現地との対話では、業務を標準化すること自体を目的とするのではなく、「なぜグループとして共通基盤が必要なのか」という経営的な意義を共有しながら議論を重ねたという。
「現地では既存のExcel中心の運用によって業務は安定的に遂行されていたが、事業成長に伴い、拠点単位の最適化からグローバル全体最適への転換が求められていた。そのため、データ活用基盤の整備や原価の可視化、サプライチェーン全体を見据えた経営管理の必要性について、丁寧な対話を重ねながら理解を深めていきました」(小島氏)
現地固有の商習慣や競争優位に関わる業務を見極めながら、どこまで標準に寄せるかをJSOLと議論して意思決定した。
また、小島氏は「SAP知見に加え、森永製菓グループとしての設計思想を理解し、現地との合意形成に寄り添ってくれるパートナーだった」と語る。

森永製菓株式会社
DX推進部 データドリブン推進グループ
小島 亙一朗 氏
「JSOL社はSAP導入の専門家としてだけでなく、当社が目指すグローバル経営の方
向性や現地法人の意志を理解しながら伴走してくれました。標準化を押し付けるのではなく、現地の強みや競争力の源泉を見極めながら、どこを共通化し、どこを活かすべきかを共に考えてくれた。それぞれの立場や課題を理解しながら、変革を前進させられるパートナーは決して多くありません。JSOL社はまさにそのような存在でした」
(小島氏)
最大の成果は、海外拠点を共通の業務・データ基盤でつなぎ、グローバルで同じ情報を見ながら意思決定できる環境を実現したことである。本プロジェクトで獲得した知見や推進力は、今後の海外事業拡大を支えるだけでなく、森永製菓のグローバル経営をさらに進化させる原動力となる。
SCM計画領域の変革 —Excelの数だけあった“計画”を一本につなぐ
SCM計画領域の変革を率いたDX推進部 ソリューションアーキテクトグループの西部
雅邦氏は、従来の計画業務を次のように振り返る。「販売計画が生産・物流・調達へ共有されるたびに、各部門が自分たちに必要な粒度へ加工し直す必要がありました」
部署別・月別にExcelが分かれ、複数バージョンが点在する状態が長く続いていた。原料供給が安定していた時代は運用できていたが、数量も単価も読みにくくなった今、その限界が顕在化していた。
現場には過去最高水準の売上高を実現してきた成功体験があり、抜本的な見直しに踏み切りにくい面もあった。西部氏は、2030年以降の事業発展から逆算する「バックキャスト」の考え方で変革の必要性を共有し、営業・物流・生産・調達がそれぞれ互いの立場を理解し合う働きかけを重ねた。具体的には、自部門と他部門の業務のつながりの全体像を示し、現状何が問題になっていて変革が必要なのか共感を得るなど、専門領域の異なるプロフェッショナルどうしをつなぐ地道な調整が続いた。
プロジェクトを前に進めた要因の一つが、「高度化」の定義を明確にしたことだ。「2日かかっていた作業が10分で済むようになるのは、高度化とも言えますが、厳密には効率化かもしれません。最終的には『今まで実現できなかったことが、可能になること』を高度化と定義しました。この定義を経営層にも賛同してもらい、トップダウンで浸透させられたことが、初期の推進力になりました」(西部氏)
計画統合により、販売から物流・生産・調達まで情報が一気通貫でつながり、シミュレーションや振り返りの質を高める基盤が整いつつある。

森永製菓株式会社
DX推進部 ソリューション
アーキテクトグループ
マネジャー
西部
雅邦
氏
データ活用基盤 — “世界のHI-CHEW”の実績をタイムリーに把握す るために
グローバルで事業を展開する中で、商品別の販売実績を横断的に把握することは容易ではなかった。データ活用領域を担当したDX推進部データドリブン推進グループの岩田 誠氏は、SAP刷新に伴い、従来のBW中心の分析基盤を新たな仕組みへ移行しながら、各社ごとに異なっていた管理指標・マスタ・分析軸を再定義する役割を担った。「単に可視化するだけでなく、データが価値を生む状態を作る必要があります。まずは森永製菓グループ全体で活用できる共通基盤を整えることが目的でした」(岩田氏)

森永製菓株式会社
DX推進部 データドリブン推進グループ
マネジャー
岩田
誠 氏
導入の過程では地道な苦労もあった。新ツールへの移行後、帳票の数字が合わない、集計方法や算出ロジックの違いが見つかるといった課題が次々と発生し、「稼働後の1~2か月は、原因を一つひとつ特定し解消していく地道な作業でした。当社の業務データを理解いただいていたJSOL社に、本来の領域を超えてご支援いただいたことは大変心強かったです」(岩田氏)
現状は、担当者が必要なデータを自分でダウンロードし、加工したうえで判断するという属人的なプロセスが中心だ。岩田氏は、データ活用のゴールを「見える化」にとどめていない。「目標は、データを活用した意思決定プロセスそのものを高度化することです。標準化され品質のそろったデータをAIが活用できるようになることで、意思決定支援の可能性はこれからさらに大きく広がっていくと考えています」(岩田氏)
すでに今後のAI活用を見据えた新たなデータ環境の検討に着手しており、これまでの知見を土台に活用の幅を広げていく考えだ。
森永製菓にとって最適なパートナーである理由
5名が口を揃えるのは、JSOL社がSAPの専門知見にとどまらず、森永製菓グループの業務・現場・経営の文脈を深く理解したうえで、標準化と現場の納得感を両立させてきたパートナーだということだ。
折見氏は「業務とシステムの両方を知り、バランスの取り方も熟知しています。また、最後までやり切る推進力があります。それを実現することは容易ではありません」と語る。「コンサルだけで進めると、Fit
to
Standardを優先した判断になりがちです。一方、現場は『ここに価値がある』と主張します。JSOL社は、経営意思決定に足る粒度で論点を整理し、相互に納得できる着地点を作ってくれます」
櫻沢氏が挙げるのは、パートナー会社の離脱危機を短期間で立て直してくれた対応力だ。「菓子・食品・冷菓の業界知見とSAPの知見を組み合わせ、『ここは譲れない』『ここは標準に寄せられる』という判断を支援してくれました」
小島氏は「システム導入を超えて経営変革を伴走するパートナー性」を、西部氏は「高度化」の定義をJSOLとともに整理し、経営層への説明や現場との合意形成を進められたことを、岩田氏は「実装ベンダーではなく、変革パートナーとしてあるべき姿を提案してくれる」姿勢を、それぞれの言葉で語る。
技術力、業務理解、そしてプロジェクトを完遂する推進力。この3つを兼ね備えたパートナーであったからこそ、国内・海外・SCM・データという4つの領域を同時に、しかも大きなトラブルなく完遂できた。それが、5名の言葉に共通して流れるメッセージだ。
今後の展望
森永製菓グループの全社DXプロジェクトは、SAP刷新を起点としながらも、システム更新にとどまらない。予実管理・SCM・原価管理・データ活用を高度化し、経営と現場をつなぐデータドリブン経営へ進む取り組みだ。
折見氏は、SAP
S/4HANAに集まった実績データをもとにした原価分解に取り組む考えを示す。「原価構造を正しく把握し、適切な意思決定につなげることができれば、その経営インパクトは非常に大きい」(折見氏)
標準化され品質の整ったデータ基盤の整備が進んだことで、現在はAIを活用した意思決定支援の高度化に向けた取り組みも始まりつつあるという。また折見氏は、「AIの時代には、企業規模そのものよりも、データやナレッジをどれだけ蓄積・活用できるかが競争力を左右すると考えています。今回の全社DXプロジェクトで築いた共通基盤は、そのための重要な土台になると期待しています」と今後を見据える。
森永製菓グループが目指すのは、業務・システム・データが分断された状態から脱却し、グローバルで成長し続けるための経営基盤を築くこと。そしてJSOLは、その構想を実現するために、SAP、周辺ソリューション、業務変革、データ活用を横断して伴走するビジネスパートナーとして、今後も同社のDX推進を支援していく。
[株式会社JSOL] 土屋 雄一郎、湯澤 亜由子、中野 修平、法島 大輔、米田 亨
[森永製菓株式会社] 岩田 誠 様、折見 直彦 様、西部 雅邦 様、櫻沢 和秋 様、小島 亙一朗 様

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