2026年03月26日
Kiroを実案件で評価してみた①
生成AIの進化により、「コードを書く」行為そのものは、以前よりも大幅に高速化されました。一方で、エンタープライズシステム開発の現場では、単に速く作るだけでは不十分です。
要件への厳密な対応、品質確保に向けた開発標準への準拠、そして関係者との仕様の合意形成ができていなければ、後工程での手戻りが増えてしまいAIを利用しても結果的に開発全体の生産性の向上が見込めません。
そこで、「エンタープライズシステム開発においてAI活用が開発生産性にどれだけ寄与するか」というテーマで、実際のシステム開発プロジェクトを題材に検証を実施しました。
検証で利用するAIツールとして、AWSが提供するKiroを選定しました。選定理由については後述いたします。
今回は3つの記事でKiroの詳細と検証結果についてご紹介します。
①(本記事)検証の概要、生産性向上に関する検証結果
②Kiro開発の具体的な流れの紹介
③Kiro活用の有用性および課題の深掘り
本記事では、検証で活用したKiroの概要、検証内容、そして生産性向上に関する検証結果をご紹介します。
Kiroとは?
今回の検証で用いた Kiro は、AWSが提供する「仕様駆動開発」を前提に設計されたAI駆動の開発環境(IDE)です。
特徴として、従来のバイブコーディングのようにいきなりコード生成から始めるのではなく、次のように段階的に“仕様を固めながら”開発を進める点が挙げられます。
・ Requirements(要件) → Design(設計) → Tasks(実装計画) を、Specsと呼ばれる単位で作成し、人との認識合わせをしながら実装へ進む
・ 仕様と実装を同一環境で扱うことでKiroが常に仕様を参照できるため、品質(ドキュメントやテスト)を開発プロセスに組み込みやすい
また、プロジェクト固有のルール(技術スタック、命名規約、コーディング規約等)をSteeringと呼ばれるファイルに保持し、それを常にKiroに参照させることでルールに則った実装が実現できます。
これらの特性により従来のバイブコーディングでありがちな、動くものはできても「なぜその実装になったのか」、「要件を満たしているのか」、「テストや設計書は揃っているのか」等の課題をカバーできることから、今回の検証に利用するAIツールとして選定しました。
各用語についての説明を記載し、テーブル(データアセット)や後述のメタデータフォーム、テーブルの列の説明などにタグのように紐づけることができます。
この機能を利用して、データや項目に対する特徴、分類をわかりやすく表示できます。
Kiroによるシステム開発の全体の流れは以下の通りです。
検証内容
Kiroの活用により開発生産性がどのくらい向上するのか、実際のシステム開発プロジェクトを題材として同一機能の「設計/実装/テスト」をKiroにて実施し、かかった工数を比較することで検証しました。
題材となるプロジェクトは、建築業界向けの施工支援システムへの追加機能開発です。
例として以下のような機能追加を実施します。
・ 新たなUI画面の作成
・ CSVファイルのデータ取り込みおよびDBへの登録
・ 地層分析のロジック
・ 分析結果の描画
等
実際のプロジェクトの要件定義のフェーズでの成果物(機能一覧、ER図)をインプットとし、設計・実装・テストをKiroで実施します。
また、設計およびテストでは、実際のプロジェクトで顧客納品した成果物の品質を目標として、以下のドキュメントをKiroで作成します。
・ 画面設計書
・ API設計書
・ テスト仕様書
ちなみに本検証の開始時点では実際のプロジェクトは2025年12月までに要件定義が完了した状態であり、実際のプロジェクトチームと本検証チームは以下のスケジュールの通り並行して追加機能の開発を実施しました。
生産性向上の結果
結果として、今回の検証では全体で57%の工数削減が実現しました。
設計では、Specs作成のためのKiroとのすり合わせや、顧客納品可能なレベルの設計書作成により工数削減は実現できませんでしたが、要件に基づき正確なSpecsを作成したことで実装では88%の工数削減を実現しました。
テストに関しても38%の工数削減が実現しており、これにはSpecsに整理された要件に基づいたテストケース作成および自動テストによるテスト実行の効率化が寄与していると考えられます。
この結果から、工程ごとにKiroの導入による生産性向上度合いは異なりますが、Kiroと対話しながら要件に則った正確なSpecsを作成することで、大きな生産性の向上が見込めると考えられます。
また、取り組みを通してさらなる生産性向上に向けた課題も抽出されており、そちらもこの後の記事でご紹介します。
まとめ
今回の検証では、エンタープライズシステム開発で必要不可欠な品質を損なうことなく、生産性を向上させられるかKiroを活用して検証しました。
Kiroの活用により57%の工数削減が実現しました。ただし、Kiroの中核要素であるSpecsの品質が生産性の向上の鍵を握ります。
次回の記事では、Kiroの中核要素である SpecsとSteeringを中心にKiro開発の具体的な流れについて詳しくご紹介します。