2024年03月18日
「データに基づく業務の最適化」を
実現するために必要なこととは
データサイエンティストとして日々業務に取り組んでいると、お客様から様々な業務課題を伺います。その中でも、話題に挙がることが多い課題の一つがデータに基づく業務の最適化です。そこで今回は、データに基づく業務の最適化を行うためにどのようなデータが必要なのか、そして、どのような点に注意する必要があるのかを、最適化手法の一つである線形計画法と合わせてお話いたします。
具体的には、まず線形計画法に関して説明した後、この手法に不可欠な概念である決定変数、目的関数、制約条件とそれらに関連するデータについて解説します。そして最後に、データに基づいた最適化全般に関して、業務に導入する際に注意するべき点についてお話いたします。
線形計画法とは
最初に線形計画法とは何かについてお話しします。線形計画法とは、(非常に単純化すると)ある一次関数の値を最大化または最小化するような値を求める手法です。
この手法は配達業務のような、「複数の地点を巡回する必要がある場合に、どのような順番で巡回すると最も移動距離が少なくて済むか」といった問題に適用することが可能です。例えば、地点Aから地点Bまでの距離をa、移動する回数をX(今回の場合は移動するか否かなのでXは0か1のどちらかになります)とすると、aとxを掛け算した値が地点Aから地点Bまでの移動距離となります。
この計算を全ての地点間で行い、足し合わせた値が、巡回を行ったときの実際の移動距離となります。線形計画法は、この移動距離を最小化するためには、どの地点からどの地点に移動すべき(X=1とする)か、逆にどの地点とどの地点は移動するべきでないか(X=0とする)かを求める解析手法です。
ここまで、巡回ルートの最適化を例に挙げて線形計画法を説明してきましたが、線形計画法は上記のような移動距離の最小化以外にも様々な問題に応用することも可能です。例えば、一回の燃料補給が膨大な量になる貨物船は、無計画に補給を行うと補給地における燃料価格の少しの違いが大きな損失につながります。しかし、線形計画法を応用することで補給量を最適化し、コストを最小化することができます。また、限られたスベースにどのように配置すれば積み荷を最大化できるかといったパレタイズ問題にも応用することが可能です。
線形計画法に必要となるデータ
ここでは線形計画法を活用する際に必要となるデータについて説明いたします。必要になるデータの種類は「決定変数」、「目的関数」、「制約条件」のそれぞれに関連するデータの3種類になります。
まず、決定変数に関するデータについて説明します。決定変数とは、線形計画法によって得られる出力データです。上述の巡回ルート最適化の例であれば、ある地点からある地点に移動する回数、貨物船の例では各補給地で補給する燃料量になります。これらの計算を行うためには、当然ながら巡回する地点に関するデータや補給地に関するデータが必要となります。このように線形計画法によって出力される解答に関係するデータがまず必要になります。
次に目的関数に関するデータです。目的関数とは、最小化あるいは最大化するための計算モデルです。巡回ルート最適化の例では地点間の距離、貨物船の例では燃料価格が、目的関数に必要なデータに該当します。目的関数は「線形計画法を利用して何を最適化したいのか」を表現する、まさにプロジェクトの目的に直結する項目なので、慎重に吟味する必要があります。
最後に制約条件に関するデータです。制約条件とは、線形計画法を解く上で守らなくてはならない条件のことを指します。巡回ルート最適化の例では、「ある地点から別の地点への移動は1回まで」、「スタート地点を除き、一度巡回した地点には戻らない」などが挙げられます。貨物船の例では、「現在の補給地では次の補給地にまでに必要な燃料を上回る量を補給する」、「補給量は燃料の最大積載量を常に下回る」などが挙げられます。制約条件は業務要件に密接に関わっており、そのため、必要となるデータも多岐にわたることが多いです。
しかし、線形計画法による最適化を業務に導入するためには、業務上の観点を反映した制約条件を設けることが不可欠です。そのため、業務現場との意見交換を行いながら検討を進め、どのデータを用いて制約条件として何を設定するべきか判断する必要があります。
業務の最適化を行う際に注意すべき点
ここからは線形計画法に限らず、データに基づく業務の最適化を行う上で注意すべき点について説明いたします。
まず最初にお伝えしたいことは「重要なことが全てデータ化されているわけではない」ということです。データに基づく最適化を行うためには、当然ながらデータが必要になります。しかし、手元にあるデータありきで分析を始めてしまうと、肝心の解決すべき問題から目標がそれ、次第に最適化という手段が目的にすり替わってしまう可能性があります。そのため、最初に最適化によって解決すべき問題は何かを定めたうえで、それを実現するためにはどのようなデータが必要かを考えることが重要になります。
逆に、「データ化されているものが全て重要なわけではない」という点にも注意が必要です。手元に大量のデータがあると、ついつい全てのデータを最適化に活用しようと考えてしまうことがあります。しかし、データの種類が多ければ多いほど常に最適化の精度が上がるわけではありません。むしろ、様々なデータに基づいて最適化を行おうとした結果、最適化の対象となる指標が増え、もっとも重要な指標の最適化が損なわれてしまうことも考えられます。そのため、時にはデータの取捨選択が必要になることもあります。
最後にお伝えしたいことは、「最適化の指標にした数値が現実を反映しているを気に掛ける必要がある」ということです。社会学の分野では、グッドハートの法則という言葉があります。これは、「目標の達成度を測るために指標を導入すると、その指標自体が目的化し、目標の達成度を測れなくなる」という傾向を表したものです。例えば、ある分野の理解度を向上させるためにテストの点数を指標とし、この得点をできる限り効率的に上げることを最適化と捉えるとします。このとき、最適化の方法として、テスト問題の傾向を把握し、出題されやすい問題の対策に重点的に行ったり、問題を解くとためのテクニックを身に着けたりすることが挙げられます。
しかし、出題されやすい問題=重要とは限りませんし、問題を解くテクニックは必ずしも理解度とは関係しません。また、この問題をクリアしていたとしても、時が経ち、状況が変わることで有効ではなくなることもあり得ます。このようにデータに基づく最適化を行う際には、その指標が達成したい目標と本当に関連しているかを常に検討する必要があります。
まとめ
以上、業務の最適化に応用できる最適化の例と、そのために必要なデータは何か、そして最適化に取り組む上で注意が必要な点を紹介して参りました。データを用いた業務の最適化は、DXの中でも代表的な事例の一つと言えます。
しかし、同じ最適化あっても、業務的な観点や利用することができるデータによって、取り組むべき問題の性質は大きく変わります。今回は線形計画法を中心にお話をしましたが、それ以外にの手法を用いた方が効果的なこともありえます。そのため、私たちデータサイエンスチームはお客さまの業務を深く理解し、意見交換を交えながら問題を解決するために取り組むべき課題とは何かを見定め、有効な解決手法は何かを見定めることを重視しております。
もしデータに基づく最適化を行いたいと考えておいででしたら、ぜひご連絡ください。