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ホーム > データ利活用ブログ(あなたのビジネスに最適なデータ戦略を) > 連載企画 第5回 MDM導入の成否を分ける「データ構造」とは ~使えるマスターデータ管理基盤をつくるために、最初に向き合うべき設計の考え方~

2026年07月20日

連載企画 第5回
MDM導入の成否を分ける「データ構造」とは
~使えるマスターデータ管理基盤をつくるために、最初に向き合うべき設計の考え方~

企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する今、変化に強い業務基盤を整えるうえで、マスターデータ管理の重要性はますます高まっています。
部門やシステムごとに分散した情報を整え、全社で活用できる状態にしていくことは、DXの推進やデータ活用、さらには経営判断のスピード向上にも直結するテーマです。
JSOLが提供する純国産MDMパッケージ「J-MDM」は、こうした課題に向き合う企業のマスターデータ管理を支えるソリューションとして、業種・業界を問わず多くの導入実績を重ねてきました。
本連載では、そのMDMの裏側にある考え方や実践知を掘り下げています。

第5回のテーマは、プロジェクトの成否を左右する「データ構造」の検討です。
なぜデータ構造の整理が重要なのか、そしてMDM導入を成功に導くために何を押さえるべきなのか
株式会社JSOLの都久井達哉氏に聞きました。

  • fi5q5q00000021nj-img/mdm_about_datastructure.png写真

    著者情報

    都久井 達哉

    D&T本 アドバンスト・インテリジェンス部 第二課

「データ構造」の検討とは、情報の整理の仕方を決めること

MDM導入における「データ構造」の検討とは、ひと言でいえば、情報をどのように整理し、どうつながりを持たせるかを決めることです。
たとえば、商品データ1つを取っても、単純に「品目名」があるだけではありません。
バラ売り、箱売り、セット売りといった単位の違いがあり、それぞれに異なるJANコードが紐づくこともあります。
顧客情報でも同様です。「得意先」という単位だけで完結するのではなく、担当者や電話番号、納品先など、1つの顧客に対して複数の情報がぶら下がる「1対N」の関係が発生します。
さらに、商品をカテゴリ別、成分別、ブランド別にまとめるような階層構造も考慮しなければなりません。
つまり、データ構造の検討とは、単に項目を並べる作業ではなく、どのデータが親で、どのデータが子なのか、どの単位でまとめると業務で使いやすいのかを設計することにほかなりません。

なぜデータ構造の整理が重要なのか

データ構造を曖昧なままにすると、後々の管理や活用が難しくなります。
近年は、DXやBIツールを活用した「データの可視化」「データに基づく経営判断」といった言葉を耳にする機会が増えました。しかし、その前提となるデータが整理されていなければ、必要な情報を正しく取り出すことはできません。
ここで重要になるのが、同じ言葉を使っていても、本当に同じものを指しているのかを見極めることです。

「同じ品目」でも、実は同じではないことがある

たとえば、複数のシステムを「品目」というキーで統合しようとしたとします。
しかし実際には、システムAの「品目」とシステムBの「品目」で、定義や粒度が異なるケースは少なくありません。

あるシステムでは販売単位、別のシステムでは在庫管理単位で品目が管理されている、といったことも起こり得ます。そもそもデータの発生源が違う場合もあります。
こうした違いを整理しないまま統合を進めると、データの不整合が発生し、せっかくMDMを導入しても期待した効果が得られません。
そのため、MDMの導入では、単なるデータ移行ではなく、データ統合や業務整理の観点から、情報の持ち方そのものを見直すことが重要になります。

成功の鍵は、実運用に耐えるデータ構造

データ構造を考える際は、理想像を描くことが大切です。
ただし、理想的な構造であっても、現実の業務で運用できなければ意味がありません。
どれほど整った設計に見えても、実際にそのデータを扱うユーザーにとって使いにくい仕組みであれば、現場では定着せず、結果としてプロジェクト全体の失敗につながるおそれがあります。
大切なのは、「あるべき姿」を描くだけでなく、実際に回る仕組みとして設計できているかを見極めることです。

いきなりすべてを統合しない

もう1つ重要なのは、最初からすべてのマスターを統合しようとしないことです。
対象を広げすぎると、効果が見えにくくなるうえ、システム部門が経営層や関係部門に対してプロジェクトの意義を説明しづらくなります。
そのため、まずは影響の大きいマスターや、課題が明確になっている領域から着手するのが現実的です。
スモールスタートで始め、段階的に対象を広げていくことで、手戻りを抑えながら着実に成果を積み上げていくことができます。

今求められるのは、理想だけでなく実現まで見据えた設計

以前であれば、理想の姿を描いたうえで、それを実現するためにスクラッチ開発を行うという進め方も一般的でした。
しかし現在は、スピードやコスト、保守性を踏まえ、できるだけ既存のサービスやパッケージを活用する考え方が主流になっています。
そのため、構想策定の初期段階から、「どのような方法で実現するのが最適か」を意識することが、プロジェクト成功の大きな分かれ目になります。
ここを考慮せずに進めてしまうと、プロジェクト開始後に「実現できない」「できたとしても期間やコストが膨らみすぎる」といった問題に直面しかねません。



プロジェクトを成功させるために、最初に明確にすべきこと

第一にまず挙げるのは、「何が課題なのか」を明確にすることです。
課題が曖昧なまま進めると、「将来何が必要になるかわからないから、何でも対応できるようにしておこう」という発想になりがちです。
その結果、データ構造は必要以上に複雑になり、設計も運用も難しくなってしまいます。

選定前でも、MDMパッケージの選択肢は知っておく

こうした事態を避けるには、事前にMDMシステムやパッケージにどのような選択肢があるのかを把握しておくことが有効です。
この段階で必ずしも製品選定まで行う必要はありません。
ただ、どのような仕組みで何ができるのかを知っておくだけでも、実現可能性を意識したデータ構造を描きやすくなります。

データ構造の設計で見落とされがちな視点

データ構造を検討するとき、意外と見落とされやすいのが、そのデータを実際に誰が入力し、誰が管理するのかという視点です。
特に、現行業務には存在しない新しいマスターをつくる場合、この役割分担が曖昧なままだと、システムとしては成立していても、運用が回らなくなってしまいます。
さらに、前後関係を持つデータでは、業務プロセスを理解していないと設計と実務のズレが生まれます。

業務の流れと、データの親子関係が逆転していることもある

たとえば、品目マスターと、その上位にある企画・成分マスターとの関係を考えてみます。
一般的には、年度のはじめに企画を決め、そのあとに品目を登録する流れが想定されるかもしれません。
しかし現場では、まず品目を作成し、後からグループ化しているケースもあります。
この場合、設計上は「グループに品目をぶら下げる」構造が自然に見えても、実際の運用に合わせるなら「品目に対して後からグループを紐づける」設計の方が適している可能性があります。
つまり、データのリレーションは、理論上のきれいさだけでなく、現場の業務フローに合っているかどうかで考える必要があるのです。

洗い替えや定期イベントまで含めて考える

また、データの定期的な洗い替えや、年度更新などのイベントも無視できません。
こうした運用イベントを考慮せずに設計すると、システム上は理想的でも、現場から「これでは運用できない」と言われる状態になってしまいます。
MDMの導入で大切なのは、システムありきで考えるのではなく、課題をどう解決するのかという観点から、データ構造と運用フローの両方を設計することです。


業務とシステムのバランスをどう取るか

MDM導入では、「システムに最適化しすぎて、結局現場では何も変わらなかった」「MDMを導入したのに、前の画面の方が使いやすかった」といった不満が生まれることがあります。
こうした事態を防ぐには、業務を優先しすぎてシステムの保守性を犠牲にするのでもなく、逆にシステム都合だけで現場に無理を強いるのでもなく、業務とシステムのバランスを取ることが不可欠です。

プロジェクト成否を分ける、2つの導入アプローチ

最近のプロジェクトでも、MDM導入に対する考え方の違いが明確に表れたケースがありました。

ケース1:標準仕様を理解し、最適な使い方を探るアプローチ

ある企業では、「Fit to Standard」あるいは「Fit & Gap」に近い進め方を採用していました。
パッケージの標準仕様をよく理解したうえで、その範囲の中で最適な使い方を模索し、必要な部分だけに手を入れる方針です。
ユーザーの使いやすさにも配慮しつつ、過度なカスタマイズは避ける。
その結果、保守性と業務適合性のバランスを取りやすくなります。

ケース2:現行業務を優先し、大規模なカスタマイズに進んだアプローチ

一方で別の企業では、パッケージの制約に合わせるよりも、現行業務のやり方をそのまま維持することを優先しました。
その結果、大規模なカスタマイズやアドオン開発に発展し、現場の業務は維持できたものの、標準仕様から大きく外れる構成となりました。
この進め方では、短期的には現場に受け入れられやすい一方で、将来的には次のようなリスクが生じます。

• 保守性が下がる
• バージョンアップ時のコストが増える
• 障害対応や改修の負荷が高まる
• システム全体の複雑性が増す

MDMは一度入れて終わりの仕組みではなく、長く使い続ける基盤です。
だからこそ、導入時の判断が、その後の運用負荷や改善のしやすさに大きく影響します。


MDM導入は「ウォーターフォール主体×要所アジャイル」

MDM導入では、全体としてはウォーターフォール型で進めるのが適している場面が多くあります。
データ構造や権限、運用ルールなど、上流工程でしっかり決めておくべき要素が多いためです。
ただし、画面レイアウトや設定まわりなど、柔軟に調整できる部分については、アジャイル的な進め方が有効です。
実際に画面やモックアップを見せながら、ユーザーからフィードバックを得て調整していくことで、大きな認識のズレを防ぎやすくなります。

ユーザーを巻き込むなら「7〜8割固まった段階」が1つの目安

ユーザーから意見をもらうタイミングも重要です。
あまりに上流の段階では、ユーザーが具体的なイメージを持ちにくく、有効なフィードバックを得にくいことがあります。
一方で、設計が固まりきった後では、修正コストが大きくなり、開発遅延にもつながりかねません。
そのため、システム部門やベンダーが業務理解を踏まえて大枠を固め、全体の7〜8割ほど整った段階でモックアップを見せるのが有効です。
このタイミングであれば、ユーザーも具体的なイメージを持ちやすく、実務に即したフィードバックを返しやすくなります。

MDM導入に向けて早期に整理すべき事項

ここまでの話を踏まえると、マスター業務をシステム化する際には、次の点を早めに整理しておくことが重要です。

事前に整理したいポイント

• 何が本当の課題なのか
• どのマスターから優先的に着手すべきか
• どのデータが親で、どのデータが子なのか
• 誰が入力し、誰が承認・管理するのか
• どのタイミングでデータが発生・更新されるのか
• 現場の運用フローとデータ構造が噛み合っているか
• パッケージ標準で対応できる範囲はどこまでか
• カスタマイズが将来の保守に与える影響は何か

関係者が多いマスター業務では、こうした論点を後回しにすると、要件定義や設計の段階で不明点が増え、意思決定が滞りやすくなります。
複数部門・複数組織にまたがるテーマだからこそ、早い段階で情報を集め、関係者間の認識を合わせておくことが、スムーズな推進につながります。

まとめ|MDM導入は「データ構造」と「運用」の一体化が鍵

MDMを活用してマスターデータ管理を進めるうえで、プロジェクトの成否を左右するのは、単にきれいなデータモデルを描けるかどうかではありません。
重要なのは、データ構造と運用フローを切り分けず、一体で設計することです。
誰が、いつ、どのデータを扱うのか。
その流れに対して、どのような親子関係や階層構造が最適なのか。
そして、その設計が将来の保守や拡張にも耐えうるものになっているか。
こうした視点を持つことで、MDMは単なるマスターの置き場ではなく、企業の変化に対応できるデータ基盤として機能します。
理想だけを追うのではなく、現場で使え、長く育てていける仕組みをつくること。
それこそが、MDM導入を成功に導くための本質だといえるでしょう。


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