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ホーム > データ利活用ブログ(あなたのビジネスに最適なデータ戦略を) > 連載企画 第7回 MDMのバージョンアップ&マイグレーションで 失敗しないために

2026年08月10日

連載企画 第7回
MDMのバージョンアップ&マイグレーションで
失敗しないために

企業を取り巻く社会環境や事業環境が目まぐるしく変化するなか、変化に柔軟かつ迅速に対応できる仕組みづくりは、これまで以上に重要になっています。その中核を担うのが、業務やシステムの土台となるマスターデータです。
J-MDMは、こうした企業活動の基盤となるマスターデータ管理を支える純国産MDMパッケージです。マスターデータを適切に整備し、全社で一貫性を持って活用できる状態をつくることは、業務効率の向上だけでなく、データ活用や経営判断の質を高めるうえでも欠かせません。

第7回となる今回は、MDMのバージョンアップ&マイグレーションの注意点についてフォーカスしました。MDMの更改を検討している企業にとって、押さえておきたいポイントを株式会社JSOLの小梶氏が解説します。

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    著者情報

    小梶 義晃

    株式会社JSOL D&T本 データアナリティクス第一部 第一課

MDMのバージョンアップは「新規導入」と何が違うのか

MDMのバージョンアップは、基本的な進め方だけを見ると、新規のMDM導入と大きくは変わりません。主なタスクとしては、事前準備、テスト、移行、お客様向けの研修・周知といった流れで進みます。
ただし、新規導入とバージョンアップでは、事前準備で重視すべきポイントが異なります。
新規導入では、要件定義を通じて「どのようなデータを管理するのか」「どの機能が必要なのか」を明確にすることが重要です。一方、バージョンアップでは、すでに稼働しているシステムが前提となるため、既存システムの機能や運用実態を正しく把握することが鍵になります。
現行システムがどのように動作しているのかを整理したうえで、どこまでをバージョンアップ対象とするのか、ベンダーとユーザーの双方で認識をそろえることが重要です。

事前準備で重要なのは「現行機能の把握」と「認識合わせ」

バージョンアップを成功させるうえで、最初に取り組むべきなのが事前準備です。特に重要なのは、現行環境の棚卸しです。
たとえば、現行システムで利用している機能、個別に追加した設定やカスタマイズ、他システムとの連携状況などを整理しておかなければ、バージョンアップ後に「想定どおりに動かない」という事態につながりかねません。
また、バージョンアップ対象の範囲を曖昧にしたまま進めると、後工程で手戻りが発生しやすくなります。だからこそ、事前段階で以下を明確にしておく必要があります。


事前に整理しておきたいポイント

• 現行システムで利用している機能
• 現行の業務運用フロー
• 他システムとのデータ連携内容
• バージョンアップ対象範囲
• 改修が必要になりそうな箇所

テストで重視すべきは「現行と同じように動くか」の検証

MDMのバージョンアップにおけるテストでは、新規開発時のようにゼロから機能を作り込むのではなく、新環境でも現行システムと同様に動作するかを確認することが中心になります。
つまり、現行システムの機能と、バージョンアップ後の新環境の機能を比較しながら検証していく形です。



テスト精度を高める鍵は「インプット情報の統一」

検証時に特に重要なのが、比較条件をそろえることです。差分の原因としてデータの違いが影響しないよう、事前にテスト環境を整えておく必要があります。
具体的には、インプットとなる情報を統一しておくことがポイントです。入力条件が同じであれば、出力結果に差異があるかどうかを確認するだけでよく、原因の切り分けがスムーズになります。
一方で、入力情報がそろっていないと、出力差異がバージョンアップの影響によるものなのか、単なるデータ差なのか判断しづらくなります。テストの前段階でデータをそろえることが、検証精度を高めるうえで欠かせません。

課題発生時はMDMだけでなく基盤側も確認する

テストで問題が発生した場合、原因は必ずしもMDM本体にあるとは限りません。MDMシステムが動作する基盤であるミドルウェアのバージョンアップに伴う仕様変更が影響している可能性もあります。
そのため、問題をMDMシステム単体の課題として捉えるのではなく、基盤側の変更点も含めて広い視点で調査することが大切です。現行システムとの比較対象を狭めず、関連する環境全体を見ながら影響確認を進める必要があります。


移行作業ではダウンタイムと切り戻し計画が重要

バージョンアップに伴い新しい環境へ切り替える場合、事前に把握しておきたいのがどの程度システム停止が必要になるのかという点です。
そのためには、本番移行の前に移行リハーサルを実施し、移行手順の確認と作業時間の計測を行うことが重要です。これにより、本番時のダウンタイムを事前に見積もれるようになります。



移行トラブル時に備えて複数の対応策を準備する


1. バックアップから元環境へ切り戻す

移行前に取得しておいたバックアップを利用し、元の環境へ戻す方法です。もっとも基本的なリスク対策といえます。

2. 旧環境を継続利用する

新サーバーへ移行する方式であれば、問題発生時にこれまでの環境を継続利用することで、結果的にバージョンアップを見送る判断も可能です。

3. 一部機能を制限して運用を継続する

一部の機能に不具合があっても、改修方法や改修期間の目処が立っている場合は、業務影響を見極めたうえで、該当機能を一時停止したり代替手段を講じたりしながら運用を続けることも考えられます。

4. 運用で一時対応し、後から改修する

テスト段階で課題が見つかり、本番までに完全解決できない場合は、当面は運用でカバーしつつ、後からシステム改修や自動化を進めるステップアップ方式も現実的な選択肢です。

5. バージョンアップ自体を中止する

最悪のケースとしては、バージョンアップをいったん取りやめ、元の状態に戻して再計画する判断も必要です。避けたい選択肢ではありますが、重大な問題がある場合には想定しておくべきです。


切り戻し判断のタイミングを事前に決める

重要なのは、こうした対応策をその場で考えるのではなく、事前に判断ポイントを決めておくことです。

• どの時点で切り戻しを決定するのか
• 切り戻しに何時間かかるのか
• 判断のリミットはいつか
• どのレベルの問題で切り戻すのか

これらをあらかじめ整理し、お客様とも共有しておくことで、緊急時にもブレのない対応が可能になります。


利用者向けの周知・研修もバージョンアップ成功の鍵

システムを実際に利用するユーザーの視点に立つと、バージョンアップ後には画面の見た目や操作性が変わる可能性があります。そのため、変更内容に応じた周知や研修も欠かせません。
たとえば、変更が軽微であれば簡単な通知だけで十分かもしれません。一方で、操作方法に一定の変更がある場合は、マニュアル更新や配布が必要になります。さらに変更範囲が大きい場合には、集合研修の実施を検討する必要があります。
MDMシステムのバージョンアップでは、根本的な変更が発生するケースは多くないかもしれません。しかし、それでも変更の影響度に応じた対応レベルを決めておくことが大切です。

周知・研修で事前に決めたいこと

• 通知のみで十分か
• マニュアル更新が必要か
• 個別説明が必要か
• 集合研修を実施すべきか

これらは要件定義の段階でお客様とすり合わせておくことで、移行後の混乱を抑えやすくなります。


MDMのバージョンアップで特に注意したい「データ連携」と「データ移行」

MDMシステムは、他システムとデータ連携しながら運用されるケースが一般的です。そのため、バージョンアップで新システムを構築する場合は、切り替えタイミングの明確化が非常に重要になります。

• 現行システムはいつまでデータ連携するのか
• 新システムはいつから連携を開始するのか
• どのタイミングで切り替えるのか
• 連携先システムの担当者と調整できているか

本番移行の当日に認識のズレが発覚すると、大きなトラブルにつながります。移行手順の確認やテスト段階から、関係各所と十分に調整しておくことが求められます。


どのデータを引き継ぐかを明確にする

もう一つ重要なのが、移行対象データの定義です。すべてのデータを無条件に引き継ぐのではなく、何を残し、何を移行対象外とするのかを決めておく必要があります。
たとえば、承認履歴のように継続的に蓄積されるデータは、年数が経つほどボリュームが増大します。

• 何年前までのデータを残すか
• 削除済みデータを移行対象に含めるか
• 履歴データをどこまで保持するか

こうしたポリシーを定め、移行対象を絞ることがポイントです。これは、MDMとしての適切なデータ管理方針を考えるうえでも重要です。


データ量から移行時間を見積もる

類似案件の実績がある場合は、サーバー上のデータボリュームをもとに、おおよその移行時間を見積もることができます。
たとえば、過去案件で2万件のデータ移行に1時間かかったのであれば、今回4万件であれば約2時間が目安になる、といった形です。こうした試算は、ダウンタイム見積もりや移行計画の精度向上に役立ちます。


新しい項目追加がある場合は移行設計が変わる

移行時に新しい項目を追加する場合は、既存データをそのまま移すだけでは不十分です。追加項目にどのような値を設定するのか、事前に決めておく必要があります。
この場合は、新規導入時と同様に、お客様側で必要なデータを用意し、更新やマージを行ったうえで新システムへ取り込む流れになります。こうした追加要件の確認も、バージョンアップ計画の中で丁寧に進めるべきポイントです。

MDMのバージョンアップを成功に導くポイント

MDMのバージョンアップやマイグレーションを成功させるためには、単にシステムを新しい環境へ切り替えるだけでは不十分です。重要なのは、現行システムの理解、比較検証の精度、移行時のリスク対応、利用者への周知、そしてデータ連携・データ移行の設計を総合的に進めることです。

• 現行機能と対象範囲を事前に明確化する
• テストでは入力条件をそろえて差分検証の精度を上げる
• MDMシステムだけでなくミドルウェア側の影響も確認する
• ダウンタイムや切り戻し条件を事前に決めておく
• 利用者への通知・研修レベルを整理しておく
• 他システム連携の切り替えタイミングを明確化する
• 移行対象データと保持ポリシーを定義する

バージョンアップは、現行資産を活かしながらシステム基盤を強化する重要な取り組みです。だからこそ、計画・検証・移行・定着化までを一貫して設計することが、安定運用への近道といえるでしょう。

まとめ

MDMのバージョンアップでは、新規導入とは異なる視点での準備が求められます。現行システムの把握を出発点に、テスト条件の統一、移行リハーサル、切り戻し計画、ユーザー周知、データ連携やデータ保持方針の整理まで、事前に詰めておくべき論点は多岐にわたります。

MDMは企業の基幹データを支える重要な仕組みだからこそ、バージョンアップにも慎重さと計画性が不可欠です。
将来の運用負荷や業務影響を見据えながら、最適な移行計画を立てることが成功のポイントになります。

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