2024年04月05日
インシデント管理とは?
実施方法やポイント・ツールについて解説
急速にIT化が進む中で、近年、企業はインシデント発生時のスピーディーな対応を求められるようになってきました。
インシデント管理は、インシデント発生時に、迅速に提供サービスなどを復旧させるために不可欠です。
ITシステムの運用において、障害の発生を完全になくすことは難しいですが、インシデント管理が適切に行われていれば、その影響を最小限に抑えることができます。
この記事では、インシデント管理の意味だけでなく、その必要性や課題、インシデント管理を効率的に行うためのツールについても解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
インシデント管理とは
インシデント管理とは、インシデントが発生してから復旧するまでのプロセスを管理することです。これにより、ビジネスへの影響を最小限に抑えながら、できるだけ早くサービスを復旧させることを目指します。
インシデント管理の一般的な手順は、インシデントの検知・記録から始まり、分類、調査を経て、解決に至り、最終的にクローズするという流れです。各段階で適切な対応を行うことで、効率的かつ効果的なインシデント管理が実現可能となります。
インシデント管理では、根本原因の解決よりも一時的な対処を優先し、サービス中断時間の短縮とユーザー満足度の維持を図ります。例えば、ネットワーク障害が発生した場合、まずは代替ルートを確保し、ユーザーがサービスを利用可能な状態にすることが優先されます。
インシデントの発生を把握し、収束までを管理して記録に残すことで、同様のインシデントの再発を防ぎ、新たなインシデント発生時にも迅速な対応が可能です。さらに、インシデントのパターン分析による将来の問題予防にも役立ちます。
インシデント管理は、結果としてサービス品質の向上やビジネス継続性の確保にも貢献します。
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そもそもインシデントとは
インシデントは、英語では「incident」という単語で、「事件」「事故」「できごと」などの意味を持つ言葉です。
分野によってインシデントの指すものはさまざまですが、IT分野でよく使われる言葉で、サービスの予定外の停止や機器の故障など、通常の運用を妨げる予定外のできごとを指します。
情報セキュリティ面でのインシデントには、不正アクセスや情報漏洩などのトラブルがあります。システムの使い方がわからないといったトラブルもインシデントです。
インシデントと障害との違い
インシデントと障害は似ていますが、厳密には異なります。障害は、インシデントを起こす根本原因(問題)の1つです。
例えば、システムの障害により、ITサービスが利用できないというインシデントが発生すると考えると、関係性がわかりやすくなります。
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インシデント管理と問題管理の違い
問題管理は、インシデントを引き起こす原因を調査し特定して、その原因を排除することです。
インシデント管理と問題管理の違いは、目的の違いにあります。インシデント管理は、なるべく早くサービスを復旧させたり、システムを使えるように維持することを目的として行われるので、必ずしも根本原因を解決するわけではありません。
それに対し、問題管理の目的は、問題そのものを発生させないようにすることです。インシデントの根本原因を特定し解決することで、インシデントの再発や新たな問題の発生を防ぐのです。
例えば、システムがフリーズしてしまうというインシデントが発生した場合に、再起動やログインをし直すことでインシデントは解消できるかもしれません。しかし、それだけでは、根本原因の解決にはなりません。何が原因で、フリーズしてしまったのかを特定し、解決、再発予防策を講じるのが問題管理です。
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ITシステム運用におけるインシデントの例
ITシステム運用でのインシデントの例としては、以下のようなものが考えられます。
・システムに突然ログインできなくなった
・メールが送信できない
・不正なWebサイトにアクセスしてしまった
・システムの画面が固まって、次の画面に遷移しない
・プリンターを認識しない
・アプリケーションを使用する際に、ライセンス切れのエラーが出てしまう
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インシデント管理が必要な理由・背景
インシデント管理が必要な理由は、大きく分けて2つあります。
1つは、インシデントの再発防止です。一度発生したインシデントに対して、適切な問題管理を行い、その要因を排除することで再発の確率を下げることができます。
もう1つは、インシデントが起きてしまった場合に、なるべく早く問題を解決し、復旧させるためです。スムーズなシステムの運用やサービスの提供のためには、インシデント管理が欠かせません。
過去に起きたインシデントを記録して、対応の履歴を残しておくことが重要です。これらの履歴を参照することで、同じようなインシデントに対して、対応のスピードを上げることができます。対応履歴には、担当者や復旧までに要した時間なども残しておくとよいでしょう。
インシデント管理は、安定したITサービスを提供し、品質を維持・向上させるために不可欠な業務といえます。
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インシデント管理のよくある課題
インシデント管理には、どのような課題があるのでしょうか。よくある課題について説明します。
同じようなインシデントを繰り返してしまう
まず、同じようなインシデントを繰り返してしまうという課題があります。早急な対応を優先するあまり、その後の根本原因の究明や解決がおろそかになると、同様のインシデントの再発が防げません。
ただし、原因の究明ばかりに時間をかけすぎてしまうと、提供サービスの停止時間が長くなるなどの問題も生じます。サービスの復旧を最優先に考え、インシデント管理と問題管理を混同しないようにしましょう。
また、せっかくインシデントを管理していても、情報の管理が煩雑になってしまうと、情報共有がうまくいきません。例えば、担当者や進捗状況がよくわからない状態では、対応が重複してしまうこともあるでしょう。過去の事例もしっかり管理して、同様のインシデントが起きた場合には、すぐに参照できる状態にしておきましょう。
インシデントへの対応開始・解決の複雑化
ITシステムの複雑化に伴い、多様な監視ツールからの大量のアラート対応が課題となっています。また、異なるツールの使用により、インシデント特定に時間がかかり、緊急事態を見落としてしまうリスクも高まっているのです。
一方で、テクノロジーの進化と市場競争の激化により、顧客の期待は高まる一方です。24時間365日のサービス提供や迅速な対応が標準とされる中で、サービスの質の向上と迅速な問題解決の両立が必須となっています。これらの期待に応えることは、システムの複雑化も相まって、ますます困難になってきているのが現状です。
インシデント対応コストの増加
インシデント対応を外部業者に委託する場合、コスト削減が難しい要因の1つに、必要な人員数の見積もりの複雑さがあります。多くの場合、「人数×時間×サーバー数」などの計算式でコストが算出されますが、実際に必要となる人員を正確に予測することは容易ではありません。
インシデントへの迅速かつ適切な対応を確保するため、多くの企業は余裕を持った人員配置を選択します。これは、人手不足による対応の遅れや不備を回避するためですが、結果としてコスト増加につながってしまうのです。
運用プロセスをどのように改善したらいいのか分からない
インシデント対応の運用プロセスに問題があることは理解しつつも、どのように改善したらいいのか、改善策を見出せない企業は少なくないでしょう。
運用プロセスの改善は、適切なデータ収集から始まります。インシデント対応の記録、MTTA(インシデント発生から担当者割り当てまでの平均時間)、MTTR(インシデント発生から解決までの平均時間)などの指標が重要です。
これらの指標を効果的に活用するには、まず運用プロセスを明確に定義し、それに基づいた管理体制と測定システムを構築しなければなりません。この測定システムの構築ができていなければ、指標を測定することもできず、ひいては運用プロセスの改善策も見出すことができません。
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インシデント管理実施の方法7つのステップ
インシデント管理の実施方法は7つのステップに分けられます。それぞれについて、簡単に説明します。
インシデントの受付
インシデントが発生したら、サービスの利用者からの問い合わせや管理システムのアラートを受け、インシデントの内容をツールに入力するなどの受付を行いましょう。
インシデントの分類
インシデントの内容をもとに、インシデントの種類のほか、緊急度や想定される影響の対象・範囲などにもとづいて分類を行います。
優先度の設定
分類後は、過去の事例なども参考にしながら、業務への影響範囲に応じて、優先度を設定してください。
サポート担当の割り当て
容易に対応できるインシデントに関しては、受付担当者が対応まで行うこともありますが、それ以外のものには、責任者や専門性を持った適切なサポート部門や担当者を割り当てる必要があります。
インシデントの調査と診断
サポート部門やサポート担当者は、インシデントの詳細を調査し、診断を行いましょう。
インシデントの解決と復旧
インシデントの原因を特定、解決し、サービスを復旧させます。サポート担当者から利用者に解決策を示し、利用者自身が復旧作業を行うケースもあります。
インシデントのクローズ
インシデントが解決したら、利用者や関係者に報告し、経緯を記録して、インシデント対応は完了です。必要に応じて、他の担当者への共有も忘れずに行いましょう。
ただし、経過観察が必要なものについては、その対応が終了するまでインシデント管理を継続します。
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インシデント管理のポイント
次に、インシデント管理のポイントを7つ見ていきましょう。
あらゆることを記録・記入する
インシデントの規模や緊急性、報告者の立場に関わらず、組織内のあらゆる出来事を単一のツールに詳しく記録することが重要です。これにより、インシデントの追跡が容易になり、対応時間が短縮されます。
些細な情報も含めて細かく記録した情報は、将来の調査やレポート作成の基盤となり、深い洞察や長期的な改善策の立案に役立ちます。この記録管理方法は、組織全体のリスク管理と問題解決能力を向上させる重要な要素です。
ナレッジベース(知識ベース)の作成
ナレッジベースの作成は、顧客サポートの質向上に不可欠です。経験やノウハウを集約すると、対応の迅速化と標準化が実現し、担当者個人のスキルに依存しない一貫したサービスが提供できます。よくある問い合わせや一般的な質問にも即座に対応できるため、不要なエスカレーションが減少し、専門スタッフの負担も軽減されます。
オペレーションルールを定義
インシデント対応時、初期解決が難しい場合は適切な部署へのエスカレーションが重要です。多様なサービスを提供する組織では、的確な判断と迅速な引き継ぎが必要となります。このプロセスが円滑に進まない場合、対応遅延や顧客離れなどの問題が発生する可能性があります。
これらのリスクを軽減するためには、明確なオペレーションルールの策定と周知徹底が不可欠です。
重要なアラートを設定する
効果的なインシデント管理には、適切なアラート設定が欠かせません。過剰な通知を避けつつ、重要な問題を見逃さないバランスが必要です。
まず、サービスの健全性を評価するための重要な指標を定義し、事象の重要度を判断する基準を設けます。次に、アラートの種類と対応手順を明確にし、緊急度に応じていつ対応するかをはっきりと区別します。これにより、チームのリソースを効率的に活用し、重要な問題に迅速に対応できるでしょう。
コミュニケーションの指針を設定する
コミュニケーション指針の設定は、チームの連携と生産性を向上させるために不可欠です。特に、適切な連絡手段の選択、内容の分類、情報の記録方法は、効果的な指針の重要な要素です。
これらを明確に定義することで、チーム内のコミュニケーションがスムーズになり、情報の共有と管理が改善されます。適切に設計された指針は、組織全体の効率性を高め、メンバー間の協力を促進します。また、過去の参照や引き継ぎに役立ち、情報の損失を防ぐことが可能です。
明確なガイドラインがない場合、重要な場面で混乱や誤解が生じる恐れがあります。明確に定義されたコミュニケーション指針は、組織の効率性と一貫性を高める重要なツールとなるでしょう。
インシデントへの対応方法のトレーニングを実施
インシデントへの対応力を組織全体で高めることは、企業のリスク耐性を強化する上で不可欠です。IT部門以外の社員が基本的なインシデント対応スキルを身につけていた場合、IT部門の担当者はより複雑な問題に集中できます。
部署や階層に関わらず一貫したトレーニングを実施することで、緊急時のチームワークとコミュニケーションが改善され、組織全体の対応力が強化されるでしょう。
問題管理と変更管理を実施
インシデント管理を効果的に行うためには、問題管理と変更管理の実施が欠かせません。
前述した通り、問題管理はインシデントの根本原因を特定し、その再発を防ぐための取り組みです。一方、変更管理は、システムやプロセスの変更を円滑に進めながら、サービスへの影響を最小限に抑える役割を担います。
これらのプロセスは、利用者に信頼性の高いサービスを継続的に提供するうえで、極めて重要な要素です。インシデント管理だけでは対応しきれない課題を問題管理で補完し、それに伴う修正や改善を変更管理で適切にコントロールすることが求められます。
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インシデント管理ツールとは
インシデント管理ツールとは、インシデントの発生状況や進捗状況を一元管理し、効率よくインシデントを管理できるツールです。
インシデント管理ツールは、主に「問い合わせ管理システム系」と「プロジェクト管理システム系」という2つのタイプに分けられます。それぞれどのような特徴があるのか説明します。
インシデント管理ツール(問い合わせ管理システム系)
問い合わせ管理システム系のインシデント管理ツールは、利用者からの問い合わせに、迅速かつ正確に対応することを可能にするツールです。
電話、メール、チャットなど経路に関係なく、問い合わせ内容を一元管理でき、過去の事例を分析することも可能です。リアルタイムで対応状況を把握できる機能や、ナレッジベースの構築、内容によって問い合わせを自動で振り分ける機能などがあります。
最近よく見かけるようになった、AIによる自動回答機能もこれに該当するでしょう。
インシデント管理ツール(プロジェクト管理システム系)
プロジェクト管理システム系のインシデント管理ツールとは、スケジュールやタスクの進捗状況を管理するツールで、導入により、これらの情報をリアルタイムで共有できるようになります。
複雑なインシデントに関しても、このツールを使用することで、社内やチーム内で、タスクやリアルタイムの対応状況を共有しながら進めることが可能なため、対応もれを防ぐことができます。
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インシデント管理ツールを使うメリット
インシデント管理ツールを使うメリットは、発生したインシデントの確認や管理、共有がしやすくなることです。
インシデント管理ツールに入力されたインシデントは、情報が可視化されることで、対応状況もわかりやすくなり、蓄積されたインシデントのデータ分析もしやすくなります。
また、インシデント管理のフローの標準化も期待できます。ツールに設定したステータスに沿って対応することで、管理フローの属人化を防ぐことができ、担当者が変わっても同様の対応が可能になるのです。
インシデント対応のデータがツールに蓄積されていくことで、ナレッジ共有も簡単になります。過去のインシデント事例を参照しやすくなるため、対応時間の短縮にもつながるでしょう。問い合わせ経路に関係なく、インシデントの内容を一元管理できるのも大きなメリットです。
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インシデント管理ツールの比較のポイント
インシデント管理ツールを使用するメリットはたくさんありますが、いざ導入するとなると、いろいろな種類があって迷ってしまうかもしれません。インシデント管理ツールの比較の際には、以下のような観点で選んでみてください。
まず、「どのような目的で使用したいのか」を明確にする必要があります。先ほど説明した2タイプのツールのように、「問い合わせ対応を強化したい」のか、「プロジェクト管理を強化したい」のかによっても使用すべきツールは異なります。
また、「バックオフィス部門でも使用したい」ということであれば、ITリテラシーに関わらず使用できるように、シンプルに操作できるツールを選ぶのがおすすめです。
目的に沿ったツールであるか検討した上で、以下のようなポイントもおさえておきましょう。
・導入コスト
・メンテナンスのしやすさ
・拡張性があるかどうか
・自動化したい業務が自動化できる機能があるか
そのほか、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)というITサービスマネジメントのガイドラインに準拠したものにするのかどうかも、1つの選択基準になるでしょう。
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まとめ
DXの推進などにより、インシデント管理は、企業の運営において今後ますます重要になることが予想されます。
限られたリソースの中で、インシデント管理を効率的に行うためには、管理ツールの導入がおすすめです。また、インシデント発生時の混乱を最小限にするためにも、管理フローを標準化し、ナレッジを社内で共有しておく必要があります。
インシデント管理だけでなく、多岐にわたる社内業務の標準化とナレッジ共有も、企業の成長には欠かせません。
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