現場の方々を巻き込みながらアジャイルに進めることが、自治体 DX のベストプラクティスです。
少子高齢化が進み、人口減少が加速している今、従来と同様の業務フローで行政サービスを提供することは困難になりつつあります。少ないマンパワーで効率的かつ質の高い行政サービスを実現するには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が欠かせません。
しかし、政府がDXを強力に推進しているにもかかわらず、現実には遅れが目立ちます。何がボトルネックとなっているのでしょうか。そして、自治体DXの推進を軌道に乗せるにはどうすればいいのでしょうか。日本で最も人口の多い市である横浜市の地域子育て支援拠点のDX推進をサポートする法人ビジネスイノベーション事業本部 デジタルビジネス事業部長の中神祥文が、自治体DXの要諦と横浜市様事例での成功ポイントについて解説します。
自治体DXの推進を阻むボトルネックは何でしょうか。
中神 大きく3つあると考えています。「職員負担が高い」「外部機関や委託先との連絡・報告・確認業務負荷が高い」「市民アクセスがアナログ」です。これらは互いに密接な関係にあるので、同時に解決しないと意味がありません。しかし、現実には部分的に効率化を進めてしまうケースが多く、かえってDXの遅れを招いています。
多いのが、「市民アクセスがアナログ」の解決を先に進めてしまうパターンです。市民ポータルサイトや電子申請システムの導入など、市民サービスのデジタル化に着手する自治
体は非常に増えています。
それ自体は素晴らしいのですが、単にデジタル化を進めるだけだと、職員の方々の業務が2倍、3倍になってしまうのです。なぜならば、従来のアナログな対応も並行して行う必要があるからです。書面や対面でのやりとりを続けながら、デジタル対応もしなくてはならないので、ただでさえ高い業務負荷がさらに高くなってしまいます。
もちろん、予算の問題はあるでしょう。実際、予算がつかずに一部のデジタル化しかできず、裏側で当該部署と情報システムのご担当者が奔走しているというお話もよく聞きます。そうした場合でも、職員と外部機関、市民の三者を見据え、デジタルシステムに合わせて業務内容からワークフロー全体まで見直すことが重要です。

横浜市様でも、同様の課題があったのでしょうか。
中神 横浜市様の地域子育て支援拠点システムは、約20年前から運用されていました。紙を前提としたフローでしたので、利用される市民の方々は各拠点を訪問する必要がありました。「市民アクセスがアナログ」だったわけですが、それによって「外部機関や委託先との連絡・報告・確認業務負荷が高い」問題がありました。
横浜市の全18区に地域子育て拠点があるのですが、運営はNPO法人などに委託をしています。委託先は、市にさまざまな報告をしなくてはなりません。生後何カ月のお子さんを連れた保護者がいつどのくらい訪れたか、全体の相談件数は何件か、どのような相談が寄せられたかといった情報を細かく取りまとめて集計する必要があります。
委託先の業務負荷は非常に高いわけですが、市の職員も大変です。手書きやExcelなど、バラバラの書式で提出されたものを確認し、取りまとめなくてはなりません。まさに「職員負荷が高い」状態で、職員のみなさんの事務能力でカバーしているものの、本来取り組むべきコア業務の時間が削られているのは明らかでした。
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そうした課題を解決するため、J’sX(ジェイズクロス)を活用して新たなシステム構築を支援されたわけですが、J’sXの概要を改めて教えてください。なぜ自治体DXのボトルネックを解消できるのでしょうか。
中神 J’sX(ジェイズクロス)は、ServiceNow の統合型プラットフォーム「ServiceNow」(*) をベースにしたオリジナルのDXテンプレートです。現在、製造業
向け、製薬業向け、そして公共(官公庁・自治体)向けの3つをご提供しています。
*ServiceNowは、従業員と企業双方に優れたエクスペリエンスを生み出し、生産性を高めるデジタルワークフローを提供するクラウド型のローコード/ノーコードプラットフォームです。
https://www.servicenow.co.jp/
JSOLは製造業から流通・サービス業、金融機関、そして公共機関まで幅広い業種・業態の要件に対応してきました。J’sXには、その豊富なシステム導入経験や業務理解、実績、
ノウハウを反映しています。
簡単に申し上げれば、ワークフローがテンプレートとして組み込まれていますので、市民サービスの受付・対応から各種報告・連絡、集計の取りまとめまでデータがダイレクトにつながり、大きく業務効率化を図ることができます。
特に公共(官公庁・自治体)向けは、申請業務のオンライン化で苦労されている自治体様が多いので、JSOLが多数所持している電子申請テンプレートやオンライン化方法論を盛り込んでいるのが特徴です。
「テンプレートをそのまま渡されてもうまく使えないのでは」と不安になる自治体もあるかと思いますが、そうした懸念にはどのように対応されているのでしょうか。
中神 もちろん、テンプレートをお渡しして終わりではありません。やはり、いろいろな自治体様をご支援しているとわかりますが、表面的には同じ業務に見えても、地域性やさまざまな事情に合わせてカスタマイズする必要があります。ですからJ’sXは、必ず「DX導入コンサル」をセットとしたご支援を行います。
ならば、ゼロベースでコンサルティングをすれば良いのではという意見もあるかもしれませんが、そうなるとコストも時間もかかります。短期間かつ最適なコストで効果を最大化するために、テンプレート化しているとご理解ください。
テンプレート化していることのもう1つのメリットとしては、他システムとのシームレスな連携が可能ということもあげられます。スモールスタートができるうえ、将来的なシステムの拡張にも対応できます。横浜市様でご支援しているシステムも、地域子育て支援事業だけでなく他事業への将来的な横展開にフレキシブルに対応できるようになっています。
横浜市様のご支援では、デモやフィードバックへの対応など、具体的にどのようなスタンスで取り組まれているのでしょうか。
中神 横浜市様のご支援でもそうですが、自治体の場合はまず入札があります。そのため、システムの構築は事前に決められた仕様にそって進めるのが一般的ですが、実際はアジャイルに進めないとうまくいかないと思っています。そもそも、入札書を見ただけで現場の方々に運用のイメージがつくのかという話なのです。現場を置き去りにしてシステムだけが完成しても意味はありません。
そこで私たちは、今までの経験から要件定義の段階から研修会という形で現場の方々に集まっていただき、意見を出してもらっています。横浜市様は18区もありますから、リモートで参加いただいて、ご一緒に要件を固めていきました。
そうすると、システム構築によって何を実現したいのか、どのように業務を変えていくとより本業に力を注げるようになるかをご理解いただけますし、参加した代表者の方を起点に各拠点にも広がっていきます。
結局、横浜市様のご支援では、本格稼働の前に5回の研修会を重ねましたので、稼働する時点で新たなワークフローのナレッジがすでに積み重なっている形を整えることができました。このように現場の方を巻き込みながら構築していくのが、自治体DXを実現するベストプラクティスだと考えています。
ご一緒に要件を固めて、
稼働する時点で新たなワークフローのナレッジが
すでに積み重なっている形を整えること
J’sX(ジェイズクロス)の採用を検討している自治体のご担当者へメッセージをお願いします。
中神 今、コストだけを見るならば安価なデジタルシステムはいくらでもあります。それに比べれば、J’sX(ジェイズクロス)は割高に感じられるかもしれません。しかし、ご説明してきたように、部分最適で一部のシステムだけをデジタル化しても、裏側ではExcelへの転記作業が新たに発生するなど、全体の業務負荷はかえって増してしまう可能性があります。業務負荷の増加をコスト増と捉えると、部分最適で導入する安価なデジタルシステムは、結果的には安価ではなかった、ということになりかねません。
今後は、今よりも質の高い市民サービスを、今までより少ない人数で実現していくことが求められます。機械ができること、自動化できることはシステムに委ねて、人は人でなければできない業務に集中できる世界を、ぜひご一緒につくりあげませんかとお伝えしたいですね。それが自治体の発展に、ひいては日本全体の持続的な成長につながっていくと確信しています。