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ホーム > SAPブログ > 「製造業ERP導入の先へ」第2回 分断されたプロセスをどうつなぎ、価値創出へつなげるか? 5つのチェーン統合で挑むデータドリブン経営

2026年06月24日

「製造業ERP導入の先へ」第2回
分断されたプロセスをどうつなぎ、価値創出へつなげるか? 5つのチェーン統合で挑むデータドリブン経営

エンジニアリング(Engineering)、サプライ(Supply)、プロダクト(Product)、サービス(Service)、カスタマー(Customer)— 本来ひとつの価値創出プロセスとして連動すべき5つのチェーンが、現場ではしばしば分断されたまま動いています。部門ごとに最適化されたシステム、属人的な判断、サイロ化したデータ。結果として、需要変動への俊敏な対応ができず、開発から販売・アフターサービスまでの一貫した価値提供に課題を抱えている企業は少なくありません。
こうした分断を解きほぐし、チェーン同士を“有機的に”つなぎ直す鍵となるのが、AIドリブン経営とSAPソリューション群が提供する統合プラットフォームです。AIが全チェーンのデータを横断的に理解し、先読みし、最適解を提示する。そしてSAPシステムが、部門を超えてデータとプロセスを一元化し、企業全体をひとつの「インテリジェントな価値創出システム」へと変えていきます。

シリーズ第2回の本記事では、分断されたチェーンをつなぎ直し、企業が本来持つ競争力を最大化するためのアプローチを掘り下げていきます。

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    著者情報

    板東 貴治

    株式会社JSOL データ&テクノロジーコンサルティング事業本部 
    プロフェッショナル(ITアーキテクト)

AI時代の製造業、欧米と日本の違いアナログの壁が全体最適や事業拡大の足かせに

多品種少量生産、ソフトウェア化(モノからコトへ)など大変革が進む製造業。ドイツと日本の製造業は、どちらも世界を代表する“ものづくり大国”として知られてきました。しかし、その強さの源泉はまったく異なる思想と仕組みに支えられています。

ドイツの製造業を語るうえで欠かせないのが、標準化とモジュール化の文化です。DIN規格やVDMAの取り組みに象徴されるように、国全体で共通仕様を整備し、企業間の連携を容易にする仕組みが徹底されています。製品設計もモジュール化が進み、組み合わせによって多品種に対応できる柔軟性を持っています。さらに、デュアルシステムによる職業教育が技能人材を安定的に育て、産業全体の底力を支えています。こうした“仕組みで強くなる”アプローチが、Industry 4.0 のような国家レベルのデジタル戦略とも自然に結びついています。

一方、日本の製造業は現場力と改善文化に根ざした“人で強くなる”アプローチが特徴です。カイゼンに代表される現場主導の改善活動、熟練技能者の暗黙知、系列を中心とした垂直統合型のサプライチェーン。これらは高品質な製品を生み出す強みである一方、属人化やデータの分断を招き、デジタル化の壁となる場面も増えています。特に、外部企業とのデータ連携や標準化の遅れは、グローバル競争の中で課題として浮き彫りになりつつあります。

両者を比較すると、ドイツは“仕組み化による強さ”、日本は“現場力による強さ”が際立ちます。AIやデジタルが価値創出の中心となるこれからの時代には、データ連携や標準化を前提としたドイツ型のアプローチが優位に働きやすいのも事実です。日本の製造業が次のステージへ進むためには、現場力という強みを活かしつつ、データとプロセスを横断的につなぐ仕組みづくりが不可欠です。

製造業の競争力は、もはや単一企業の努力だけでは生まれません。国・産業・企業がどのように連携し、どのようにデジタルを取り込むか。その方向性を考えるうえで、ドイツと日本の違いは大きな示唆を与えてくれます。

ERPを中心にチェーンを統合
実現に向けた3つの成功ポイント

製造業は、財務、会計、人事、生産、販売、在庫といった基幹業務を中心に、エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、プロダクトチェーン、カスタマーチェーン、サービスチェーンといったチェーン(現場)に対しビジネスプロセスが循環することで成立します。

基幹業務を管理するERPを“脳”に例えた場合、心臓や手足といった各機能をスムーズに動かすために、ネットワークという神経を通じた情報伝達(データ連携)が必要です。システム観点では、ERPが現場に指示し実績、販売など経営情報を可視化します。さらにERPを中心にPLM(製品ライフサイクル管理)、SCM(サプライチェーンマネジメント)、MES(製造実行システム)、CRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)などのデータを連携・活用することで、リアルタイム経営を実現します。また、シミュレーション、AIエージェントなどデジタル技術を駆使したものづくりでは、チェーンの枠を超えた横断的なデータ活用が必要です。

データ連携によるチェーン統合の概念図

ERPを中心にチェーンを統合し、AIを活用したデータドリブン経営を実現するためには3つの成功ポイントがあります。

1.レガシーなERPからの脱却

まず、レガシーシステム、レガシーERPからの脱却が欠かせません。ERPを単なる基幹業務システムとしてではなく、企業全体をつなぐ中枢として再定義し、標準化された業務プロセスへ移行することが求められます(Fit to Standard)。SAP Cloud ERPでは、継続的なアップデートと標準化されたデータモデルを提供し、チェーン統合の基盤となります。従来のようにアドオンを重ねてERPを固定化するのではなく、SAP Business Technology Platform(BTP)による拡張性と連携性を備えたSAP Cloud ERPへ移行し、変化に強いアーキテクチャへと転換することが、デジタル変革の第一歩となります。

2.SaaSデータ基盤の構築

次に重要となるのが、チェーン横断でデータを統合・管理するためのデータ基盤です。SAPシステムでは、SAP S/4HANAを中心に、前述のPLM、SCM、MES、CRM、SFAといった各領域のアプリケーションを標準APIで連携させ、企業全体を一つの生命体のように機能させるアーキテクチャを提供しています。しかし、アプリケーションがつながるだけでは不十分であり、データそのものが統合され、横断的に活用できる状態が必要です。そこで重要な役割を果たすのが、SAP Business Data Cloud(SAP Datasphere、SAP Databricks)およびSAP Business Data Cloudの拡張機能であるSAP Snowflakeといったデータ基盤です。

SAP Business Data Cloud は、SAPデータと非SAPデータを統合し、サプライチェーン、製造、顧客データなどを一貫したセマンティックモデルで扱える環境を提供します。

SAP Datasphere はその中でも特に、SAPデータの構造やビジネスコンテキストを維持したまま外部データと統合できる点が特徴です。これにより、ERPやSCM、MESなどのデータがそのまま分析に活用でき、チェーン全体の可視化が容易になります。さらに、SAP Snowflake との連携は、クラウドデータウェアハウスとしての拡張性を提供し、膨大なデータを高速かつ柔軟に分析する基盤を構築します。Snowflake 上で SAP データを直接活用できるため、サプライチェーンの需要変動分析や製造現場の品質データ分析など、従来は困難だった横断的な分析が可能になります。SAP Databricks はデータレイクとSAPデータをシームレスに統合し、大規模データ処理やAIモデルの高速実行を可能にします。特に、機械学習や生成AIを活用した高度な分析において強みを発揮し、チェーン全体のデータを横断的に活用するための強力な基盤となります。

これらのデータ基盤は互いに競合するものではなく、SAP Business Data Cloud を中心に、Datasphere がデータ統合のセマンティック層を担い、Snowflake が分析基盤としての拡張性を提供し、Databricks がAI・MLの実行環境として機能するという補完関係にあります。

SAP Business Data Cloud

3.Business AI

そして、AIドリブン経営を実現するためには、クラウド環境とリアルタイムデータが不可欠です。
SAP Business AIでは、需要予測、在庫最適化、設備の予兆保全、品質異常検知、設計変更の影響分析など、チェーン横断のデータを前提とした高度な分析を提供します。これらのAIは、クラウド上で継続的にアップデートされ、最新のアルゴリズムを企業に届けてくれます。SAP S/4HANA Cloud、SAP BTP、SAP Business Data Cloud、SAP Databricks といったクラウド基盤が整うことで、企業は“事後対応”ではなく“先読みして動く経営”へと進化していきます。

ERPを中心にチェーンを統合し、AIを活用したデータドリブン経営を実現するためには、レガシーからの脱却、データ基盤の整備、そしてクラウド×AI環境の構築という三つの視点が不可欠です。
SAPはアプリケーション、データ基盤、AI、クラウドを一体で提供できるプラットフォームであり、製造業が次のステージへ進むための最も現実的な選択肢となっています。
日本企業が再び競争力を取り戻すためには、現場力という強みを活かしつつ、データとAIを中心とした新たな価値創造モデルへと進化することが求められています。

SAP が実現するチェーン統合とデータドリブン経営
— SAP Cloud ERP × Business Data Cloud × Joule がもたらす新しい製造業の姿

チェーンを統合しデータを活用することで、業務プロセスがどのように変わるのか。具体例を紹介します。

[エンジニアリングチェーンへの還元]

サービス現場で得られた故障傾向や使用データを設計にフィードバックすることで、品質向上、付加価値の高い製品開発につながります。設計と製造、サービスがつながることで、製品は“作って終わり”ではなく、継続的に進化する資産へと変わっていくでしょう。

[サプライチェーンの進化]

需要予測と供給計画、生産計画が統合され、欠品と過剰在庫を同時に抑制できます。部品不足や物流遅延といったリスクを早期に検知し、代替案を自動的に提示することで、レジリエンスの高いサプライチェーンを構築できます。設計変更がサプライヤーに即時共有されることで、調達リードタイムの短縮にもつながるでしょう。

[プロダクトチェーン]

製造領域の統合は、工場の生産性と品質を大きく引き上げます。MES の実績データが ERP や SCM と連携することで、設備負荷や品質状況に応じた柔軟な生産計画が可能になります。工場データと需要データがつながることで、段取り替えや生産順序の最適化も実現し、トレーサビリティの強化によって品質問題の原因特定も迅速化されます。

[カスタマーチェーン]

カスタマーの統合は、顧客価値の最大化に直結します。顧客の利用状況や購買履歴が設計・製造・サービスに共有されることで、製品企画の精度が向上し、より顧客に寄り添った製品開発が可能になります。在庫や納期、構成情報が統合されることで、最適な提案や見積を即時に提示でき、顧客体験の質も大きく向上します。

[サービスチェーン]

サービスチェーンの統合は、製造業のビジネスモデルを変革します。IoT データと製造データ、サービス履歴を統合することで、故障予兆を検知し、予防保全を実現できます。これにより、サービス契約やサブスクリプション型ビジネスなど、新たな収益モデルの創出が可能になります。さらに、サービス現場で得られた知見が設計や製造にフィードバックされ、製品の継続的な改善につながります。

チェーン統合の中心にあるのが SAP Cloud ERPであり、こうしたチェーン統合を支えるのが、SAP Business Data Cloudを中枢としたデータ基盤です。また、これらのデータとプロセスをつなぎ、ユーザーの意思決定を支援する存在が SAPのAIソリューション「Joule」です。従来は専門家が時間をかけて行っていた業務を、Jouleが瞬時に支援することで、企業は“先読みして動く経営”へと進化できます。

このように、エンジニアリング、サプライ、プロダクト、カスタマー、サービスの5つのチェーンが統合されることで、企業は部分最適ではなく全体最適の経営を実現できます。チェーン統合は、単なる効率化ではなく、企業の競争力そのものを再定義する取り組みだと言えます。

各分野のスペシャリストがチェーン統合を支援
計画からPoC、構築、展開まで一貫支援

ERPを導入し、AIやデータを活用する次のステップにどのように進むか。このロードマップは今後の成長に関わる重要な羅針盤となります。まず、自社にとって業務プロセス変革の優先順位を付け、それを実現するためにデータ基盤を構築し、必要なデータを集めることが第一歩となります。

JSOLでは、NTTデータグループの総合力と日本総合研究所の知見を融合し、エンジニア、アーキテクトからデータサイエンティスト、各製品のスペシャリスト、AI・生成AIのエキスパート、IoT見える化のスタッフまで製造業DXをサポートする体制を整えています。計画検討の段階からPoCの実施、構築、展開、運用までを一貫して支援できるのが強みです。また、25年以上にわたるSAP基幹システムの導入支援に加え、各チェーンに関連する幅広い製品の豊富な導入実績とノウハウを有しています。

ERP導入の先へ、製造業がAI時代を勝ち抜くためには、今から基盤を整備し動き出すことが大切です。一歩早く取り組むことで競争優位に向けて得られるメリットはより大きくなります。

シリーズ 「製造業ERP導入の先へ」

  • 第1回: DXレポート ~ERP導入で終わらせないデータ活用とは?製造業のコスト競争力を高める第一歩
  • 第2回: DXレポート ~「製造業ERP導入の先へ」分断されたプロセスをどうつなぎ、価値創出へつなげるか?

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