2026年07月16日
Agentforce時代にSalesforceアーキテクトが
考えるべき3つのこと
生成AIの活用が業務システムの前提になりつつある中で、SalesforceにおいてもAgentforceへの関心が高まっています。
一方で、AIエージェントを業務に組み込む取り組みは、単に新しい機能を有効化するだけでは十分ではありません。AIエージェントが業務の中で適切に判断・実行するには、何を任せるのか、どのデータを参照するのか、どこまで実行してよいのかをあらかじめ設計しておく必要があるためです。
AIエージェントが何を判断し、どのデータを参照し、どこまで実行し、どのタイミングで人に引き継ぐのか。
そこには、業務・データ・権限・運用を横断した設計が求められます。
Salesforce Architect サイトでも、Agentforce に関する設計パターンや Agent Development Lifecycle(企画から本番運用後の改善までの進め方)などの情報が整理されています。
そこから見えてくる、アーキテクトが意識したい 3 つの観点を整理します。
1. AIに任せる仕事を見極める
従来の業務システムでは、ユーザーが画面を開き、項目を入力し、ボタンを押すという「操作」を中心に設計することが一般的でした。
AIエージェントの登場により、この前提は少しずつ変わり始めています。ユーザーが細かな操作手順を指定するのではなく、「この商談の次の打ち手を整理してほしい」「問い合わせ内容を確認して、必要ならケースを起票してほしい」といった目的をAIエージェントに委任する世界が広がっていきます。
ここで大切なのは、「どの機能を使うか」よりも前に、「どの業務目的を、どの粒度でAIエージェントに任せられるのか」を見極めることです。見極めができていれば、効果を確認しながら段階的に適用範囲を広げることができます。一方で、見極めが不十分なまま導入すると、対象業務が広がりすぎたり、人の判断が必要な場面まで自動化しようとしたりして、現場に定着しにくくなります。 すべてをいきなり自律型エージェントに任せる必要はありません。まずは人の判断を補助する、特定の条件を検知して通知する、といった使い方から始める方が現実的です。
2. AIが迷わないように情報とルールを整える
AIエージェントは、何もないところから正しい判断を生み出すわけではありません。適切に振る舞うためには、参照すべきデータ、実行できるアクション、守るべきルール、例外時の引き継ぎ先が必要です。
特に、顧客情報、商談、活動、問い合わせ対応が日々の業務判断や顧客接点に直結する領域では、この整理が重要になります。前提が曖昧なままでは、誤った情報にもとづく提案や対応、不要な確認作業の増加につながる可能性があります。
Salesforceの強みは、顧客、商談、活動、問い合わせ、ナレッジなど、業務の文脈を表すデータがCRM(顧客情報や営業活動を管理する仕組み)上に蓄積されている点にあります。
しかし、データが存在することと、AIエージェントが業務判断に使える状態になっていることは同じではありません。
例えば、商談フェーズの定義が部門ごとに異なる。活動履歴の粒度が人によってばらつく。承認が必要な判断と、現場で即時実行してよい判断の境界が曖昧である。このような状態では、AIエージェントを導入しても期待した効果は出にくくなります。
アーキテクトは、AIエージェントが「何を根拠に」「どの範囲で」「どのアクションを実行してよいか」を設計する必要があります。例えば、部門ごとに商談フェーズの解釈が異なる状態では、AIエージェントの提案も一貫しません。そこでアーキテクトがデータの意味、判断基準、実行できるアクションを整理することで、AIエージェントの出力を、現場が判断材料として使いやすいものに近づけることができます。これは従来のデータモデル設計やプロセス設計を、AIエージェント時代に合わせて発展させる領域です。
[JSOLの公開事例]でも、Agentforce Sales(旧Sales Cloud) を中心に顧客・商談・活動履歴を統合し、部門ごとに異なっていた営業プロセスや指標を共通化したうえで、EinsteinやAgentforce セールスコーチングを活用する取り組みが紹介されています。ここから得られる示唆は、AI活用の前に「業務の流れ」と「データの意味」を揃えることが重要だという点です。AIと人が協働するには、まず人と組織の中で情報の見方が揃っている必要があります。
3. 使いながら改善し、安全に育てる
従来のシステム開発では、同じ入力に対して同じ結果が返ることを前提に、設計、開発、テスト、リリースを進めてきました。一方、AIエージェントは自然言語の解釈や推論を伴います。同じように見える依頼でも、入力の表現や会話の文脈によって出力が変わることがあります。
だからこそ、Agentforceのような仕組みを業務に組み込む際には、リリースして終わりではなく、継続的に評価・改善するライフサイクル(使いながら育てる仕組み)が重要になります。
AIエージェントが期待通りに回答しているか。不要なアクションを実行していないか。人へ引き継ぐべきケースを見逃していないか。こうした観点を継続的に観測し、改善していく必要があります。
また、AIエージェントが実行できる範囲を明示し、不適切なアクションを防ぐガードレール(越えてはいけない境界)を設計することも重要です。誰の権限で、どのデータにアクセスし、どのアクションを実行できるのか。便利さと統制の両方を設計することが、アーキテクトの役割になります。
おわりに
Agentforceは、Salesforce上の業務データやプロセスと結びつくことで価値を発揮します。一方で、その価値を引き出すには、AIエージェントに何を任せるのか、どのデータを使うのか、どのように評価し続けるのかを設計する必要があります。
AIエージェントの活用は、単なる機能追加ではなく、業務の進め方そのものを見直す取り組みです。
だからこそ、Agentforce時代におけるアーキテクトの役割はますます重要になります。最新動向を学び続け、技術と業務、人とAI、現場の使いやすさと企業としての統制の間に立つ。そして全体として価値が出る形に設計することが、これからのSalesforceアーキテクトに求められる役割ではないでしょうか。
● Salesforce Architect: Get Started with Agentforce
https://architect.salesforce.com/docs/architect/fundamentals/guide/get-started-agentforce.html
● Salesforce: JSOLが挑むAgentforceと人が二人三脚で成長する未来
https://www.salesforce.com/jp/customer-stories/jsol/